[オイル交換記録]カナブンの弾丸は労働者を撃ち抜く

 オートバイのオイル交換をするたびに記事を一本上げることにした.
 尚,本来は日付とオドメーターの記録を目的としているため,記述内容は全く関係の無い雑記の集積とする.

 


上半期に読んだ本

Babel I 少女は言葉の旅に出る (電撃の新文芸)

 ライトノベルを最後に読んだのはいつだろう……と考えても結論が出ないほど久しぶりにライトノベルを読んだ.私は,ファンタジー作品全版が苦手である.特に異世界に転生する様式の作品は,異世界と我々の棲まう現世は言語体系が異なる筈なのに何故言葉が通じるのだろう,という真っ当な(つもりの)疑問を拭えず途中で投げ出すことが常態化している.
 その疑問に対して,一つの解を示してくれる作品であった.正直,分量も内容もまったくライトではないが,同じ問題意識を持つ方は是非.*1

異世界語入門 ~転生したけど日本語が通じなかった~
 ちなみに,しっかりと積んでいるけれど上掲のように言語がまったく通じなかったパターンのライトノベルもありますね.

 

日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙 (ハヤカワ文庫JA)

 ここ2,3年なかなか小説を読むのが辛くて,昔は時間を忘れて耽読していた三島由紀夫谷崎潤一郎を読むことさえ厳しく,特に未読の作品は全く読めない惨状であったが,どうやら SF は読んでいられるようだと判った.
 表題はアンソロジー形式で,なかでも大樹連司著『戯画・セカイ系』はゼロ年代をオタクとして過ごした人々は間違いなく楽しい.
 これは,私たちオタクへの手向けの弔辞のような小説でした.作品自体が一種の卒業式.

 

分節幻想 ――動物のボディプランの起源をめぐる科学思想史

 何故読んだのかと訊かれると答えに詰まるが,自分の興味が向いている分野の思想史を省略する発想がそもそも存在しない.
 本書は,過去の科学者たちが脊椎をもつ生物の体節とその相同性*2を如何に理解してきたか,歴史を追う総説的な書物……と思っていた.
 私にとっても棚からぼたもちの嬉しい誤算であったが,特に面白いのは相同を定量化し,(少なくとも上に)評価する巻末の試論であった.馴染みのない方には,反復説*3のようなことを実しやかに語るトンデモ科学を今でもときどき見かけるので,試論の序だけでも読んでもらいたい.以下は同著者の軽量版.
形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ (サイエンス・パレット)

 

ゴジラ幻論 ――日本産怪獣類の一般と個別の博物誌

 上記『分節幻想』と同著者の,ゴジラリスペクト本.怪獣が実在する世界ではきっとゴジラ原論だが,ぼくらの現生では『ゴジラ幻論』なのだな.
 ゴジラ作品中の登場人物の子孫や,登場人物そのものが学会発表などの体裁でゴジラの形態と発生を考察する.通常の怪獣本からも,生物学の教科書からも得られない知見がたくさん載っている.現時点で今年一番面白かった本の筆頭候補.

 

カモノハシの博物誌~ふしぎな哺乳類の進化と発見の物語 (生物ミステリー)

 カモノハシって面白くないですか? 哺乳類に分類されているのに,鳥類みたいな総排泄腔があるし,蹴爪に毒腺を持つし,口吻のような形質もあるし.「祖先的な哺乳類だ」の一言で片付けることもできるけれど,そもそも哺乳類ってなんだろうね.そんなことを考えるきっかけになった本.

 

キャンベル生物学 原書11版
Campbell Biology

 訳あり,入用で基礎生物学を,特に進化学を中心に勉強する必要性が生じた為に読み始めた.最初は電子版で原書12版を読んでいたが,途中で心が折れた.過去の出版状況を見るに,邦訳は奇数版に限られるだろうと踏んで邦訳12版の出版を待たず11版を購入.
 Campbell は(類書では省略されがちな気がする)進化を下地とした記述が多々なされているのが楽しい.

 

進化とゲーム理論―闘争の論理
生き物の進化ゲーム ―進化生態学最前線:生物の不思議を解く― 大改訂版
進化ゲームとその展開 (認知科学の探究)

 いまの興味の中心にあるもの.なかなか理解するのに時間がかかっているけれど,自分が興味を持つ分野ふたつが接点を持ち,学際領域をなしているというのは幸せなものです.何かを書くことができるほど勉強できていないので,次回更新(遅くとも年末)にはまともな記事を上げたい.

 


やったこと 
  • バイクを買った.(2月)
     ツーリングがたのしい.もういい歳なのでほいほいと行くことはできないし,250ccでの遠出は腰が引けるけれど,見知らぬ土地を目指してのんびり走るのはよいものですね.通勤通学でさえちょっとたのしいです,少なくとも満員電車よりは,圧倒的に.
  • Fate/stay night[Heaven's Feel]Ⅲ.spring songの復刻上映を観た.(4月)
     単独で記事を上げるつもりだったけれど,叶わなかったのは筆無精によるもの.オタク人生の嚆矢は間違いなく『明日のナージャ』であったけれど,“オタク”という語彙をもって自分をオタクと定義したのは『涼宮ハルヒの憂鬱』のリアタイ放送,そして,人生で最も長い時間かかわった作品はFate/stay nightであった.苦節15年.
    「もう,(サブカル文化は)ここまででよいかな」と完膚なきまで燃え尽きてしまうほど嬉しい映画化でした.

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    去年できなかったこと

  • Heaven's Feel 地味聖地巡礼をした.(3月)*4
     あまり大きな声で言うものでもないけれど,昔から聖地巡礼は割と好きなんですよね.というわけでいくつか.

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    HFで初出の通学路

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    rainの直前

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    柳洞寺山門および山道


  • 司法試験の勉強をはじめた.(4月)
     特筆すべきことはとくにないけど,酔狂の一言で片付けるにはあまりにも勉強が楽しくて続いている.自分が強く興味を持ちそうな法制史,法哲学,刑法思想にはなるべく触れないように.生存戦略セーフティネットも大変です.

  • 劇場版名探偵コナン『緋色の弾丸』を観た.(5月)
     オタクとして生きることに見切りをつけたとて,もはやオタクは属性ではなく生き様です.そう簡単に体質は変わるものじゃない.
     何が言いたいかというと,これを観る為に*5重要回+αとはいえ1話からほぼ最新回*6まで1ヶ月半で走り切った.我ながらどうかしている.
     しかしその甲斐あって,実に楽しかった.何が楽しいって,名古屋然り,横浜然り,親しみのある場所以外いっさい出てこなかった.良い映画でした.*7

  • PFU Happy Hacking Keyboard Professional BT(無刻印)を買った.(7月)
     キーボードがセブン銀行 ATM になりました.これであたいのデスク環境もさいきょうね!
     慣れるまで大変だけど慣れたら爽快.いっそマウスも欲しいけどまだ悩ましい. 
     

  • 国立科学博物館 特別展『植物 地球を支える仲間たち』に行った.(7月)
     科博の夏の特別展って,その年一番の目玉だと思うんですよ.科学少年少女が集まってくるわけで.その目玉展を植物一本で開催するとは,絶対に楽しいという直感がはたらいた.アングレカム・セスキペダレおよびキサントパンスズメガXanthopan morganii praedicta)の標本を観察することができたのも,カワゴケソウの生体を見ることができたのも貴重な経験でした.送粉者の気持ちになって展示を観察すると,きっと普通に見るより数段楽しいよ.

以下,申し訳程度の本文.


オイル交換した.
data 2021/8/11
odometer  44959km

銘柄はこれ,購入時2396円.
スラッジたぶんなし.フィルタ交換なし.

感想 周りに坂道しかないからバイクを水平にするのが一番大変だった.

以上.

*1:しかし,私たち現世の人間も,そして大概,異世界の人々も,同じ世界の異民族でさえ(というか,同じ民族のなかでさえ)なかなか分かり合えず諍いを繰り返しているのに,仮令言葉が万能翻訳機などを介して通じたとしても,異種族間ってそう簡単に分かり合えるものだろうか,という疑問は相変わらずで.その点に関しては,

ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~ (1) (角川コミックス・エース)

が,面白かった.

*2:種の異なる生物の器官で,発生的に同一起源であること.たとえばクジラの胸鰭と馬の前脚とか.

*3:要するに,個体発生は,祖先生物が現生生物へ到るまでに辿った形態発生を再現しているという仮説.

*4:順番が前後したのはひとえにサムネイル都合であります

*5:厳密には『ゼロの執行人』を観たら望外に面白くて,完璧に予習し切った上で最新映画が観たくなった.ミステリィ好きは「緋色の〜」のタイトルに途轍もなく弱い.

*6:具体的には,当時 Hulu で配信されていた最新回がいわゆる修学旅行編だったので,そこまで.

*7:余談だが,翌日にうっかりセントレア中部国際空港まで走りに行った