スーツを作る その2

 前回のあらすじ.

 ・スーツを作ろう.

 ・Universal Language Measure'sで作ろう.

 ・さてどうしよう.

あらすじおしまい.


 

 愚生のスーツに対する需要を書き記しておく.
 私は決してスーツを仕事で着るわけではないし,着ることが求められる場面もそう滅多にない.せいぜい葬式か結婚式ぐらいだろうが,若くして結婚するような生き方をしている友人は居ないし葬式を頻繁にするほど親戚も居ない.20代だが,葬式の方が近そうな友人の方がよほど多い.

 要するにスーツは選び放題である.ただの私服だ,シングルのピークドラペルだろうがダブルブレステッドだろうがなんでもござれ.生地は華やかなほうがより面白い.
 好みをいえば,シングルの2ピースがあまり好きではない.今回も3ピースが大前提,さらにウエストコートはダブルの襟付きなんて酔狂な事をするつもりで.

 

 

 本題.
 作る場所が決まってしまえばあとはとんとん拍子なので,ここからはあまり山はありません.
 Universal Language Measure'sには,作る前にお邪魔してHPに載っていない詳細を何点か教えていただきました.HPご覧頂ければ分かると思いますが,正直ちょっと不親切です.主に有料オプションは行かなきゃ本当によく判らないです.
 以下,そのときに教えてもらったことや私の思索やらをパーツ別に.

ジャケットのこと

 肩はいじれないらしいので,肩幅に合わせてゲージ服を選んで補正していくようです.
 パターンオーダーのいいところは融通がききづらい代わりに型紙の完成度が非常に高いところですね.ゆえに補正箇所は少なければ少ないほど良い.筆者はゲージ服の胴回りを4cm絞って左腕を0.5cm詰めるだけで済みました.

 型紙は大きく分けて4通り.肩パッドが入っていないイタリア風なモデルが二種類,肩パッドありのイギリス風のモデルが一種類,比較的細身のスーツが一種類だそうです*1
 肩パッド無しのスーツに興味がなかったので,他の型紙は殆ど見てもいません. 構築的で肩もロープド気味なものが好きなので,筆者はブリティッシュモデルなる型紙一択.袖もほんの気持ちフレア気味で好みでした.

 ラペル幅が±0.5cmしか変更できないらしいので,肩パッドの有無にこだわりがなければラペル幅で選ぶことになるのでしょうか*2.今回,ラペル幅は標準で9.5cmとかなり広めだが,8.5cm~9cmが好みなのでよし.一応0.5cm詰めました.

 ちなみに,次回作るならダブルブレステッドのつもりだったので,一応その場合の料金も確認したが,大体生地代金の1割増だそうで.

 

ジャケットのオプションのこと

 Universal Language Measure'sで作ることを決めた理由の一つだが,大概有料になるオプションが無料になるそうだ.前の記事にも書いた通り,AMFステッチや本切羽に必ずしもこだわりはないけれど,無料で標準装備ならそれに越したことはない.本水牛やナットボタンが無料なのは大きい.

 斯くの如しなので,あまりオプション代があまりかからない.筆者の場合,ジャケットでの追加料金は裏地以外にかかっていない.裏地は追加料金無しだとポリエステル.2000円追加でキュプラ,3000円追加でキュプラの柄物を選ぶことができた.筆者は3000円載せてブラウンのペイズリーに.
 チェンジポケットを付けたが,こちらも追加料金は無し。

 ボタンは,標準装備の本水牛にした.ちなみに,ボタンで有料オプションなのはメタルボタンのみだそうだ.スーツであれば一切関係はない. 

 

 余談だが,これらオプションを麻布テーラーで要不要問わず全て付け足すと以下のようになる.

オプション 金額 個人的必要性
本水牛ボタン ¥3,500
袖口本開き ¥3,000 ×
台場仕立て ¥3,000
フルステッチ ¥2,000
フルD閂仕様 ¥1,000 ×
胸ポケットバルカ型 ¥0
上襟裏髭折返し ¥1,000 ×
Vスリット ¥1,000
ベルトステイループ ¥1,000 ×
総計 ¥15,500  
個人的に必要性に基づく合計 ¥9,500  

 裏髭折返しを追加料金払って頼むのは理解しがたいが,他は大概どこもこんなものであろう*3*4.麻布テーラーの場合,バンチブックからのオーダーなのに価格がかなり抑えられているので,オプションの追加料金かかりやすいのもそれはそれで頷ける.好みは人それぞれなので,少しでもオーダーっぽい生地を使いたい人には向いてるだろう(後述).

 Universal Language Measure'sでオプションを標準装備にした事情は,そもそもこれら全て既製服のディティールとして使っていたものだから,それをオーダーラインに流用しても良いのではないかという単純なものだそうで.

 

エストコート(ベスト)のこと

 こちらはどうもあまり補正がきかないらしい.一度仕立て上がったものを着てから,また併設の工房でなおすことを勧められた.
 あまり型紙の話はしなかったが,筆者はダブルブレストの襟付きで作った.
 目安としては生地代金の三割がベスト代.そこにダブルブレストと襟付きのオプションで合計5400円ほどかかった.
 ウエストコートの裏地はジャケットの裏地と別料金でキュプラに変更できるらしい.「えー,別料金なのかー……」と思い,二の足を踏んで化学繊維にしたが,正直かなり後悔している.ケチらずキュプラに変更しておけばよかった.キュプラに変更する場合の追加料金は2000円だそうだ.

 

トラウザーズのこと

 深いこだわりはないので,正直あまり話を聞いていない。たしか股上が調整できないから股上の深さの好みを聞かれた.プリーツありが良いということも伝えて,あとはなすがまま.

 本当はパンチェリーナ仕様にしたかったが,こちらは追加3000円かかるとのこと.履き心地も見た目も綺麗だが,3000円かけてまで欲しくはないから諦め.ベルトループ無しでの仕様もできるそうだが,春先に2ピースで着ることも一応考慮して*5ベルトループは指定しなかったので、おそらくベルトループありで仕上がるのではないかと.ちなみに,ブレイシーズ用のボタンは追加料金なしで受けてくれた.とてもありがたい.
 仕上げはダブルにしたが,とくに追加料金はかからず.
 仕上げがダブルの場合、裾の仕上げを糸留めかボタン留めか選べるようだった.裾に砂とゴミが溜まる田舎の中学生でもあるまいし,糸留めでお願いした.

 

生地のこと

 Universal Language Measure'sで作る際の最たるネックが生地だと感じた.選択肢がかなり少ない.というのも,通常ラインは既製服用の生地で*6,既製服用の生地でなければそこまで安くはない.通常ラインの生地はバンチカードに季節ごとブランドごとに収められているが,生地ブランドが出しているオーダー用の通常のバンチブックもある.

 参考までに,VITALE BARBERIS CANONICOの生地だと,既製服用のバンチカードだと4.9万円~6.9万円ほど.バンチブックのオーダー生地だとそこに2,3万円ほど上乗せされるという塩梅.さらに引っかかる点もいくつかあったので,それは後述.
 しかし別にぼったくりをしているわけではなく,バンチブックからの注文はとにかくコストがかかる.具体的には生地一着あたりの輸送コストが1万円以上,さらに倉庫での保管コストも乗っかってくる.工場や店舗で持っている生地とバンチブックとで価格が大幅に異なるのはこのような事情が大半を占める.私は専門家ではないし確認もしていないが,これらの議論を抜きにしてプレタ用の服地とオーダー用の服地の価格の差がそっくりそのまま生地の品質の差になるとは必ずしも言い切れないだろう.

 とにかく,安く作れる理由そういうことらしい.幸い,既製服用の服地から良いものが見つかったので,特に気になることはなく.もしかしたら二回目以降はここがネックになるかもしれませんが…….
 今回は,CANONICOで6.9万円,340g/mのフランネル生地で作ることに.

 余談も余談だが、後日,Suit CompanyやUniversal LanguageのHPを覗いたらバンチカードで見た生地で仕立てられたスーツが何着か売られていた.当たり前と言えば当たり前だが,オーダー用の特別な(?)生地で作りたい人には物足りないかもしれない.金額を積めばバンチブックの生地でも作れるが,それなら別の仕立て屋でいいかな……というのが正直な感想.

副資材と仕立てのこと

 自分の考え方として,まず,接着芯で良い生地よりも総毛芯で普通の生地がよかったので妥協しがたい点でした.仕立てはハンドメイドでもマシンメイドでもいい.

 生地によって仕立て方が決まっているようで,総毛芯のハンドメイドで作る生地とハーフ毛芯のマシンメイドで作る生地があらかじめ決まっている.どう分けられているのかは判然としなかったが,マシンメイドの工場とハンドメイドの工場があって,それぞれの生地が既に工場に納品されているのだとか.

 ただ,ハーフ毛芯の生地に対して追加料金1万円で総毛芯に,さらに追加料金1万円でマシンメイドからハンドメイドに変更してもらえるそうだ.筆者の選んだ生地はハーフ毛芯の仕立てだったので,総毛芯に変更.340g/mとかなり重たい生地だからマシンメイドでもあまり差は出ないだろうし,手作業や手仕事に対する幻想も抱いていないので,ハンドメイドへの変更は無し.

 

納期のこと

 時期によって違うからなんとも言えないだろうが,今回は1ヶ月半で、1月の半ばを目安にしてほしいとのこと.この時期は成人式需要で工場が混むこともなんとなく予想が付く.ハンドメイドかマシンメイドかで納期が異なるらしいが,今(2018/12時点)はマシンメイドの方が納期が遅いと言われた.ハンドメイドの場合は3週間ほどらしい.
 というのも,2着で4.9万円のキャンペーンでマシンメイドの工場が立て込んでいる為だとかなんとか.すぐに出来上がる方が仕上がりが恐ろしいので,別に問題はない.

 


 以上.総額は10.8万円を株主優待で15%割引いて9.4万円ほどでした.きっちり予算に収まりました.今思えばもう少し他の生地も検討して良かった気もしますが,かなり気に入った生地がたまたま見つかったのでそのへんは満足です.

 当然まだ完成品は届いていませんが,調整が必要な特殊体形ではなく生地よりも副資材にこだわるならお勧めできるかと.

 次回は通年のウーステッド生地でダブルブレステッドのスーツを作ろうと思っています.とりあえずUniversal Language Measure'sも覗いて,気に入った生地があればまた作ってもいいかと思える程度には満足です.
 兎にも角にも今は仕立て上がりが楽しみでどうも落ち着かず,次に作るスーツの参考画像や生地を探してばかりなので…….

 次回記事は仕立て上がったら.

≪続きます≫

*1:よくブリティッシュモデルとかイタリアンモデルとかいうけれど,マーケティングの都合で付けられた名前に過ぎず,本来そんなものは存在しないのであまり好きではない表現です.個人的に.

*2:以前はラペルも全くいじれなかったらしい.

*3:麻布テーラーに尻シックの項目は見当たらなかったので省略.

*4:話題がぶれてしまうのでこちらも省略したが,麻布テーラーだとパンチェリーナ仕様は+7000円かかるらしい.3000円でも渋るのに.

*5:2ピースだからといって果たして340g/mのスーツを春先に着られるのか……?

*6:例外があるのかもしれないが確認していない.